―わたし好みの新刊― 2013年9月
『もしも宇宙でくらしたら』 山本省三作 WAVE出版
近年は宇宙ステーションなどの映像もしばしば見られるので,宇宙での短期の生活についてはかな
り知られる
この本はそうした宇
引っ越す予定があるのならこ
著者は童話や紙芝居なども手がけているルポライター。文章は平易で小学5年くらいなら読める。
内扉を開けるとこんな手紙が紹介されている。
「地球の 山川小学校のみなさんへ。おとうさんが 宇宙ステーションではたらくことになったので、
かぞくもいっしょに 宇宙へ ひっこししました。ぼくの 宇宙での一日を 日記に書いたので
読んでみてください。 宇宙ステーション3ちょうめ1番地 天野 光 」
本では,光君の宇宙での日常生活が描かれている。
「宇宙では きがるに ボタンはおせない。それに、体がういてしまうので ベッドにも ねられない
んだ。だから、かべにとりつけられた ねぶくろでねる」
そうか。宇宙では簡単にスイッチを押すことができないのだ。押すと自分の体がはねかえされてし
う。ベットでのんびりと寝られないのが少しつらいようだ。イラストの横には,簡単な解説がつけられ
ているので,なぜそ
トイレではどのようにして用を足すのだろうか。もし,おしっこを地球と同じように外に放すと…水玉
になって飛び散ってしまうのだそうだ。おしっこは管に入れて袋につめてしまう。では,うんちは?
やはり,地球とは違う道具がいるようだ。さあ,みんな連れだって学校へ行く時間,どんなふうにして学
校へいくのだろうか。
ステーション通路を浮きながら
で,すいすいと学校まで泳いでいける。
ざっと,こんなふうに日々の生活や学校生活のようすが描かれている。宇宙生活がかなり現実味を
帯てくる現在,楽しい絵本である。 2013年6月刊
1300円
『炎のひみつ ―燃焼の科学―』伊知地国夫写真 土井美香子文 滝川洋二監修 さ・え・ら書房
本書カバーに「本書は、科学の本ですが軽快なストーリー仕立てになっています。高校一年生の主
人公が、
に、科学的知識が知識にとどまらず、人間の生き方にも関わっていきます」と書かれている。科学読み
物としての試みである。
この本は,「わたし」という高校生が「おじいちゃん」や「姉」「弟」など身近な人と対話風に話を
展開し
で火は消し止められたが,そこから「わたし」は火について学んでいく。1限目「燃えるいろいろ」,2限目
「燃え続ける
この本の最大の魅力は,各所
ろうそくの炎を消した時に出る煙粒子,真っ赤に燃えたスチールウール,無重量の中の炎,水草から発生す
る酸素中で燃える線香など見事である。
1限目「燃えるいろいろ」では,ガスやマッチを燃やしたあと,「煙って、いったい何?」,「煙って気体み
たいだけれど、白く見えるのは小さな粒つぶがあるからなんだ。粒つぶは固体なんだよ。煙が燃えたみた
いだけど、目に見える煙のほかに、見えない気体もありそうだね」と、物知りじいちゃんの解説が入る。
続いて、アルコールの燃え方や引火の話、線香花火の話に入る。
2限目「燃え続けるためのいろいろ」で「燃える原理」にせまっていく。マッチなどが登場して炎がなくて
も火がつくことも知る。そして,ものが燃えるには何がいるのかお兄さんの解説が入る。
「普通、ものが燃えるときには、
っていかないと燃えないんですよ」
と解説される。ここは重要な燃焼の基本である。お兄さんの一言でイメージできるのだろうか。
続いて「燃えると重くなる?」に入る。これも燃焼の大切なポイントであるが現象的な実験で終わっている。
あとで「酸素と鉄が結びついた化合物ですから」と説明されているが納得できるのだろうか。
分子,原子を扱わないでこれだけの話を盛り込むのはもったない感じがする。この本の趣旨の「理科読の
本の世界」に子どもたちがどこまで楽しめるか子どもたちの反応に期待したい。
2013年5月刊 2,200円(西村寿雄)